全ての発明が他人の模倣から保護されるわけではありません.
世の中には特許制度の利益を得ている発明と、特許制度の利益を得ていない発明があります.
特許制度は発明を他人の模倣から守るための制度です.
発明を他人の模倣から守りたいなら特許制度を利用して単なる発明を特許発明に昇華させる必要があります.
単なる発明は模倣を許した発明
特許制度があるにもかかわらず、特許制度を利用していない発明は、特許制度の利益を受けることを放棄した発明です.
つまり特許発明に昇華させていない単なる発明は、だれでも模倣して良い発明を意味します.
もっとも特許制度の利益を得たくても特許制度が要求するレベルに達していない発明もあります.
このような発明は特許発明に昇華させることはできません.
この場合はノウハウとして独自に他人の模倣から守るしかありません.
発明と著作物の違いは模倣の扱い
あらゆる発明のなかから特許制度の利益を得ることができる発明を抽出して特許発明として保護するのが特許制度です.
そうすると特許制度は、全ての発明は原始的には模倣自由であるという考えに立脚することになります.
これに対して著作権制度は特許制度のような審査や登録という手続きを必要としていません.
コンテンツが創作された時点で、何らの手続きを必要とすることなく、他人の模倣から守るための著作権が与えらます.
これは全ての著作物は原始的には模倣禁止であるという考えに立脚しているからです.
発明と著作物は保護対象が違う
同じ創作物であるにもかかわらず発明は模倣から守るための手続きを必要とし、著作物は模倣から守るための手続きを必要としない.
著作物は発明よりも上位にあるのかという疑問が沸いてきそうです.
しかし著作権は表現を保護し、特許権はアイデアを保護するという役割分担ができています.
例えば、コンピュータ・プログラムは特許権の保護対象であり、著作権の保護対象でもあります.
コンピュータ・プログラムで同じ機能を実現しようとする場合、その表現方法はいくつもあります.
そのなかの一つの表現を無方式で保護したとしても他の表現に与える影響は大きくありません.
もしコンピュータ・プログラムを無方式で特許権で保護してしまったらどうなるか.
同じ機能を実現する表現はいくつもありますが、その上位概念が特許で保護されてしまうと、その概念を具現化した表現も全て保護されることになります.
表現の保護に比べてアイデアの保護は影響が極めて大きいのです.
なぜ特許を取らなければならないのか?
「権利の上に眠る者は保護に値せず」という法諺があります.
本来、権利の時効消滅を例えた諺ですが、特許を受ける権利を有する者が、その権利を行使しないなら、発明を模倣から守る権利を得ることができない、と例えることができます.
特許を取得するという選択も自由であり特許を取得しないという選択も自由です.
日本では模倣されるリスクは低いから日本の特許は必要ない.
中国では模倣されるリスクが高いから中国の特許は必要だ.
日本の市場は小さいから模倣の影響は小さい.
中国の市場は大きいから模倣の影響は大きい.
模倣を許容できるかどうかという視点で特許取得の必要性を考えてみてください.
0コメント