話し合いで解決できないのがトラブル

ソフトウェアの開発業務を中国企業に委託したときのトラブルを紹介します.

 

進捗の遅れが目につき始めたころ、難易度が高いので委託料を上げて欲しいという連絡がありました.

中国企業の場合、低い金額で入札を勝ち取り、その後、値上げを要求してくることが少なくありません.

値上げ要求には応じずに契約を打ち切ることにして、手付金の返還と違約金の支払いを求めました.

 

しかし相手の中国企業は違約金の支払いどころか手付金の返還にすら応じようとはしません.

中国企業に非があることは認めています.

にもかかわらず、いろいろな言い訳をして金銭の支払いを逃れようとするのです.

 

交渉にならない交渉に疲れ果て、最終的には手付金の一部を返還することで手を打ちました.

相手はWin-Winで解決できたと喜んでいましたが明らかにWin-Loseでこちらの負けです.

 

交渉の前に訴訟

後日、この話を中国人の弁護士に話したところ交渉の仕方が間違っていると指摘されました.

中国ではまず訴訟を起こしてから交渉を始めないと相手は真剣に交渉しないのだそうです.

 

訴訟は交渉のテーブルにつくためのきっかけに過ぎず、交渉が成立すれば訴訟は取り下げです。

 

訴訟に至らないように誠実に交渉をすすめるという日本のが日本の考え方です.

しかし、この考え方で中国企業と交渉をしても時間がかかるだけで満足のいく結果は得られません.

 

中国企業との交渉を成功させるには、まず訴訟.

これが中国流交渉術です.

 

仲裁解決が機能しない理由

海外企業との取引契約において、紛争解決手段として裁判ではなく仲裁を選択するのが一般的です.

そして仲裁機関として第三国を選択するのが一般的です.

しかし第三国の仲裁機関が判断した結果がどのように扱われるのかについては事前に確認しておくべきです.

 

例えば中国の場合、中国以外の外国の仲裁機関が判断した結果を中国で執行する場合は、中国の裁判所の承認が必要です(中国民事訴訟法第267条).

 

紛争解決手段として中国以外を選択したにもかかわらず、最終的には中国の裁判所の承認を得なければならないのです.

中国企業が不利になるような仲裁判断の執行を承認しないことは明らかです.

これでは紛争解決手段として中国の裁判所を選択した場合と何ら変わりません.

 

ほとんどが国有化されている中国の企業ですから、そのような企業が国家の意に反するような第三者機関の判断に従うことは固よりできないわけです.

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