取引を始めるときに交わすのが契約書。
でも契約書のことを真剣に考えている人がいない、
ということを日々の実務で感じています。
理由は一つ。
契約書を作ってもどうせ守られないから。
特に、相手が中国企業だと顕著です。
自身が嫌な経験をしたり、
メディアもそのような報道をしていることも原因です。
契約書は守るものと思っている多くの日本人にとって、
契約を守らないというのは想定すらしていないことです。
しかし実際の取引では往々にして契約が守られないことが多く、
そのことは事実として知っておくべきです。
自身の経験からすると、
契約は絶対守るものという考えは、
日本以外ではスタンダートではないと感じています。
契約を守る、守らないは、
当事者が自身の利益に照らして判断することで、
盲目的に契約を守ることにこだわってしまうと、
ときとして自身の利益に反することになります。
契約を守るのも自由、
契約を守らないのも自由、
と考えておいた方がいいと思います。
自由に判断することができるならば、
契約が守らなかった場合に被る不利益、
これを明らかにしておけばよいことになります。
契約を守らなくてもデメリットがない、
契約を守ることで被るデメリットよりも、
契約を守らないことで享受するメリットの方が大きいから、
契約を守らないという選択が可能になってしまいます。
つまり契約書を作成する場合は、
契約を守らせるような仕組みを作る、
契約を守らなかった場合に取り得る手段を用意しておく。
というのが実務的な対応になります。
契約債務不履行の抑止力の一つとして知的財産権を使います。
契約違反については、
債務不履行による損害賠償責任を課すことができます。
しかしこれだけでは足りません。
契約の効力は当事者にしか及ばず、
債務不履行責任が課されるのも当事者のみです。
例えば、転売禁止条項の効力を考えてみます。
工場からの横流しを禁止するために、
再譲渡禁止特約を設けることがあります。
相手が転売禁止条項に違反して第三者に再譲渡した場合、
債務不履行責任を課すことができるのは、
契約相手の譲渡人だけです。
契約相手から譲り受けた第三者に対して責任を追求することはできません。
そこで特許権などの知的財産権が機能します。
契約の効力は当事者にしか及ばないのに対して、
特許権の効力は対世的に及びます。
契約相手から譲り受けた第三者に対しては知的財産権を行使します。
再譲渡禁止条項に反して第三者に譲渡する理由は、
再譲渡した方が利益を享受できると判断したからです。
譲受人に対して知的財産権が行使されるなら、
譲り受ける方も譲渡する方も慎重にならざるを得ません。
知的財産権の侵害については民事の他、
犯罪として国家が応報します。
債務不履行の抑止力として、
これほど強力に機能する知的財産権を活用しない理由はありません。
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