エルメスの偽物が質屋で真贋鑑定できなかったというニュース、
私の経験から現在の偽物事情を書いてみることにします。
偽物というと粗悪品を想起する方がいます。
ところが現在の偽物は品質において正規品と変わるところはありません。
なぜ偽物と正規品とで品質に差がないのか。
正規品を製造している正規工場で偽物が作られているからです。
もう少し具体的に申しますと、
正規工場は製品の歩留まりを考慮して、
オーバーロットで製造するのが当たり前です。
オーバーロット製造が当然に行われていると、
なかには意図的にオーバーロットで製造する工場も存在します。
意図的にオーバーロット製造する目的は横流しです。
横流し品も正規品を作っている製造ラインで作られています。
品質において正規品と変わりがないのは当たり前です。
ところで、この横流し品を偽物といえるのかどうか。
例えば中国で商標権侵害品の行政摘発を行う工商局においても、
正規品の横流しを商標権侵害品とは認めてくれません。
横流し品は契約に反して流通しているもの、
したがって商標権侵害品ではなく契約違反品という扱いです。
知財権を絡めた契約実務では、
横流し品が知財権侵害品である、
このことを契約書定めておきます。
知財権侵害を理由とする行政摘発は、
この条項があれば可能になります。
横流し品が知財権侵害か否かは、
単に契約条項があるか否かに過ぎず、
正規品も横流しされた「偽物」も実施的には同じです。
このような偽物事情なので、
質屋さんが真贋鑑定ができないのは当たり前です。
横流しを目的とした意図的なオーバーロット製造以外にも、
歩留まりを理由にオーバーロット製造した製品も同じく横流しされます。
少し違ったところで、
検品落ち、いわゆるB級品ですが、
これは検品基準に満たないという品質的な問題があったものです。
検品要求が高いブランドでは、
検品落ちと言ってもほとんど見分けがつきません。
契約上の問題、
その効力は当事者間にしか及びません。
契約違反に過ぎなければ債務不履行に過ぎません。
知的財産権侵害という扱いになれば、
対世的に効力が及び、
行政摘発や刑事罰の対象になるわけです。
横流し品を知財権侵害に昇華させる方法、
このためには契約の工夫が大切です。
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