商標登録するときの出願人住所に一貫性をもたせる


 

同じような商標が複数登録されてしまうと出所の混同が起きてしまいます.

出所の混同が条件なので、出所の混同がおきなければ似たような商標であっても登録されます.

出所の混同がおきない商標とは出所が同じ商標のことです.

すでに登録されている商標と似ていても、その権利者と同じ出願人なら登録されます.

 

事業者の居所の表記は一致させにくい

出願人の同一認定は、事業者名の一致はもちろんのこと、事業者の居所の一致も必要です.

事業者名の同一性を満たすことは簡単でも、事業者の居所の同一性を満たすことは意外と難しいものです.

事業者の表記は一通りでも、居所の表記は複数あるからです.

東京都千代田区霞が関三丁目4番3号という特許庁の居所は、

東京都千代田区霞が関3丁目4−3、

東京都千代田区霞ヶ関三丁目4の3

など、複数の表記が可能です.

(この程度の表記の相違は同一であると見做しています)

東京都千代田区霞が関町3−4−3

東京都霞が関3−4−3

東京都港区霞が関3−4−3

このような表記で居所が特定された場合は、出願人が同一であるとは認められません.

自分の登録商標であっても、先行登録商標と似ているという理由で自分の登録商標が引用されて拒絶されます.

 

外国出願は表記が相違しやすい

日本国内の出願であれば、識別番号の記載で居所の表記を省略することができます.

居所の表記をしなければ、居所の表記の相違を避けることができます.

ところが外国出願では、出願人情報を英語で表記します.

さらに英語の表記を現地語に翻訳して表記します.

 

居所を英語で表記するときは、日本語で表記する以上に表記の方法が多岐にわたります.

3-4-3, Kasumigaseki, Chiyoda-ku, Tokyo, 100-8915, Japanという表記に対して、

4-3, 3-chome, Kasumigaseki, Chiyodaku, Tokyo, 100-8915, Japan

3-4-3, Kasumi-ga-seki, Chiyoda-ku, Tokyo, 100-8915, Japan

このように表記された居所が同一であると認められるかどうかは現地政府次第です.

さらに、この表記が現地語に翻訳されたときは、さらに表記のバリエーションが増えてしまいます.

 

国際登録商標は注意が行き届きにくい

出願人同一の判断は、同一国内で出願された商標だけではありません.

国際登録された商標も同一性判断の対象です.

 

国際登録された商標の権利者の居所と、例えば中国に直接した出願したときの出願人の居所が不一致の場合は、国際登録商標の権利者情報を修正する、もしくは中国国内出願の出願人情報を修正して、出願人の同一性を担保させることができます.

 

たとえ形式的な居所の修正であっても日本のように簡単に修正できるわけではありません.

修正前の居所と修正後の居所が同一であることをどのように証明するのか.

そのようは書面の公証を得ることができるのか.

面倒な手続きであると同時に費用も嵩みます.

 

国際登録商標の情報を修正する方が遥かに簡単です.

ただし国際登録商標の情報を修正してしまうと、その影響は各国に登録されている国際登録商標に影響を及ぼします.

修正したことにより事後的に拒絶理由が発生することもあります.

 

中国の拒絶理由をクリアするために国際登録商標の情報を修正したところ、中国以外の国において出願人の同一性がなくなり先後願の関係になり、後願の出願商標が拒絶されることもあります.

 

一括変更が必要

複数の商標権があるときに、居所や名義の一括変更が求められる国があります.

中国では、複数の商標権の名義や住所・居所を変更する場合、複数の商標権に対して一括して変更手続きを行わなければなりません(商標実施条例第30条)。

一括変更しない場合は、変更申請は放棄されたものとして扱われます。

 

一括変更が求められていない日本でも、居所の表記が異なる複数の権利を放っておくと、その登録商標が他人の先行登録商標として見做されて拒絶の理由になりかねません.

 

代理人に一貫性をもたせる

出願するときの出願人情報に一貫性をもたせる一つの方法は代理人を変えないことです.

国内の代理人、現地の代理人、同じ代理人を使っているかぎり、出願人情報が出願ごとに異なることを避けることができます.

 

代理人を変えると、出願人情報が新たに作成されるのですが、その場合に、すでに出願されている出願人情報を参照することは期待できません.

その結果、同じ出願人であるにもかかわらず、異なった出願人情報が存在してしまいます.

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