日本の地名が中国で商標登録されてしまったと言って対策に追われている記事を今でも目にする。
中国で日本の固有名詞や商品名が登録されるという被害(?)は2010年の上海万博のときにはすでに問題として認識されているから、あれから10年が経っても同じような被害を受けて対策に追われていることになる。
クライアントと利害関係があるかもしれないので、この手の対策については口を挟まないことにしていたが、少し荒い言い方をすれば、なぜ最初に出願しないのかということに尽きる。
商標を取られたくないなら自分で出願しておいて下さい、と言うと使うかどうか分からないから出願する必要は今のところない、という答えが帰ってくることが多い。
しかしいざ出願されると登録されたくないという思いが先に出て対策に翻弄される。
この段階であれば異議という手続きも可能であるが、出願する場合のコストに比べれば0が一桁増えるし、異議が認められるかどうかさえも分からない。
商標は出願という意思表示をした者に独占権を与えるのである。
日本から見れば、日本のネーミングを勝手に出願して、と思うのだろうが、中国から見れば、自分たちの漢字の組み合わせがたまたま日本のそれと一致していたに過ぎないし、登録のカテゴリーを見ると全く日本のそれとは被っていないことも多い。
それでも日本側の当事者は、全く違うカテゴリーでも将来、その分野でビジネスができなくなるという危機感を口にする。
このような禅問答が繰り返されるのだが、一企業ならまだしも自治体がこのような対応をして、異議や無効手続きに莫大な費用をかけるとなると、その費用はどこから捻出されるのですか、と言いたくなってしまう。
最初に出願しておけば数万円で済むことが、時機に遅れたことにより、数十万円では済まないというコストに跳ね上がるのである。
商標法の趣旨から言えば、使う予定のない商標を出すことはご法度なのだろうが、現実には、それが最も確実かつ低コストでの対策であり、初動を誤れば徐々に形成が悪化し、最後は司法判断に委ねるという悪手を打つ。
国として中国政府に対策を求めて欲しいという声もあるらしいが、商標に限らず知的財産権は私権であるから、それは自分たちで守らなければならないのが原則。
日本に関係する商標がどの程度、中国に登録されているかは分からないが、中国の代理人が日本に関係のありそうな登録商標のリストを送ってくることから想像するに、それなりの数の商標が登録されており、さらにビジネスにつながるのだろう。
ビジネスとは異議や無効のような法的手続きではなく商標買取。
異議・無効手続きで数十万円、数百万円を費やしてどうなるか分からない結果を3年、5年待つよりも需要があるのだろう。
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