意匠の審査は本当に早い。
180日もあれば登録されるという意味は遅くても180日ということ。
実際は3から4ヶ月で登録されるケースが多い。
忘れた頃に拒絶理由が通知され、4割程度しか登録されない特許に比べれば遥かに使い勝手がいい。
180日という短期間で登録される意義は大きい。
海外へ出願する計画の場合、国内で登録されるかどうかを見極めることが少なくない。
180日以内に審査結果がわかる意匠は、優先権を主張して海外へ出願する場合にもとても重宝する。
国内で登録されたという自信は、海外出願を躊躇しているときには追い風になる。
決して安くない費用を捻出して頂くからには、登録の可能性が高いことを国内の登録結果で説明できるので、代理する側も積極的に海外出願を後押しすることができる。
しかし、この意匠、名前が悪いのか余り人気がない。
ほとんどの相談者は最初は特許を取りたいという。
そこで特許に係る費用、手続き、難易度を説明したあと、意匠の代替性について説明するのだが、その結果として、意匠を知って頂くケースが多い。
日本の場合、特許という言葉が想起させるイメージが過大過ぎるという事情もあるので、それならアメリカのようにデザイン特許という名前に変えれば確実に知名度と需要は増えると思う。
意匠という言葉が技術的な保護を排除しているのだが、技術的は保護は間接的に担保されている。
特許で保護する技術的な機能は、ほとんどの場合、形状により実現されている。
形状の保護を主とする意匠で、プロダクトの形状を保護するのだから、これは結果的は形状により実現される機能を保護していることに他ならない。
意匠には形状の保護以外にも、模様や色彩を含む形態も保護対象なのだが、模様や色彩の保護という印象が意匠の魅力を低下させているのだろう。
ところが模様や色彩を主とする形態の意匠を出願することは無いに等しい。
意匠で保護できる対象も年々拡大されていて、UI画面や最近の店舗内装や光など、生活に密着しているものが増えている。
特許に比べて意匠は弱いという都市伝説があるが、係争を経験したことがある人なら意匠の強さを実感しているはず。
特許は技術的思想を文章で表現し、保護範囲も文章で表現されているため、文言解釈という高度なテクニックが要求される。
文言解釈なので人によって当然に解釈が異なり、権利者は広く実施者は狭く解釈しようとする。
係争になるとこの解釈の相違が顕著になり司法判断という泥沼の世界に行き着くことになる。
これに対して意匠は外観のデザインを図面で表したものが保護対象でり、権利範囲も図面に記載されたデザインである。
似ている似ていないという主観ではあるが、特許のような文言解釈に比べて遥かに解釈の範囲が狭い。
紛争回避という視点から見れば解釈が難しい特許よりも一目瞭然の意匠の方が強い。
法改正で権利期間も特許並みに延長されているので意匠を使わない手はない。
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